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受け入れること(前編) 
いつからこの苦悩の日が始まったのかを、私は思い出すことができない。
気付いたら、言葉になど言い表せない苦痛が全身を侵していた。
まず、安眠が奪われた。次に上半身の動きが鈍くなった。痛みは日毎に酷くなり、私が様々
試したことを、全て否定し嘲笑うかのように、「動き」を奪った。
歩くこともままならない日もあった。一睡も出来ない夜もきた。
仕事ができなくなり、家事も手抜きになった。掃除機が使えない。洗濯物が干せない。
玄関と階段は危険地帯になった。玄関先のタイルは、いつも私の足を滑らせる。

寝ても醒めても、立っていても座っていても、身体から痛みが消えることはない。
シートベルトが鎖骨に触れるだけで激痛だ。
それらの痛みは外からの刺激にも関わらず、身体の内側から、熱せられた矢の束で刺されるようだ。
夜中に息苦しさと背中の激痛で覚醒する。眠りたい欲求は満たされずに薬に頼る。
何種類の薬を試したろうか?その都度、淡い期待を抱き、数ヵ月後に粉々に砕け散る。跡形
もなく吹き飛ばされる。

服の薄い布が、誰かの声が、身体に残る汗が、それらが全て痛い。
子供の泣き声は、特に刺激する。
体調が更に悪い時などは、匂いさえも痛く感じる。
誰もわからないだろう感覚。

身体の内側に悪魔が巣食い、身体の中で好き勝手に暴れる。
精神までもおかしくなった。悲観的。刹那的。
生きることから逃げ出したい。死にたいのではない。生きるのが辛い。
何処へ行くにも、何をするにもこの苦痛は私の中から消え去らない。
いつも一緒にいる。

自由と言う言葉があるとしたら、きっと私は不自由だろう。
自分の身体を操れない。魚が何も考えずに海を泳ぐ。鳥はただその羽で空を飛ぶ。
人間は、歩くことに対して何の疑問も持たずに、脚と手を動かす。
それが私には、できない。
呼吸をすることを意識せずにいられない。息苦しいからだ。
自分の身体の存在を常に意識している。

人は、身体に異常を来たして初めてその意味を知る。
常に逃げる方法を探していた。
その間にも、身体の異常はあちらこちらへと形を変えて現れた。
光が眩しい。ドライアイだった。毎日、偏頭痛に悩まされる。吐き気で煙草も吸えない日が
3ヶ月続いた。
口の中がカラカラに乾いて、いつもミネラルウォーターのペットボトルを携帯した。
シェーグレンシンドロームを併発している可能性が高い。
膨大な量の薬が処方される、が、どれも効果はない。
何もかもがイヤでイヤで、この怒りのやり場がないことを知り、発狂しそうだ。
自分自身を藁人形にして、杭を打ちつけたくなった。
何が悪いのか、どこがいけなかったのか?私はこれ程の罰を受けなければならない罪人なのか?
バスタブに湯をはっている間に、この中に沈んだらと訳もなく考えていた。
何かに縋りたい。助けと救いを求める。でも、誰に?何に?
頭の中は、そんなことばかりだった。肉体と精神が崩壊すると思った。

ある時、病院の待合室で診察を待っていた。
予約なんてものは、アテにならない。その時刻はとうに過ぎていた。
座っているだけでも痛い。通路を歩く患者や看護師、医師たちの足音までもが、痛みを増幅させる。
息ができなくなった。このまま死ぬのではないかと感じた。
そのまま、知らぬ間に、長椅子に横になっていた。誰かが慌てて駆け寄ってきた。看護師だ。
何かを尋ねられた。苦しいとだけ答えた記憶がある。うろ覚えだ。

車椅子に乗せられ、病院特有の白いパイプベッドに寝かされた。
ベータブロッカーの注射をされた。そのまま、少しの間眠った。
声が聞こえる。
隣のベッドに老婆が横になっていた。脇にはその夫と思われる年老いた男性が、何かしきり
に話している。
他に、中学生くらいの男の子が二人とその母親と思しき40代中ごろの、丸い顔をした女性。
老人の話は、意味が全くわからない。話があちこちより道をする。そして結局、もとの道に
は戻らず、わき道にそれたまま。
自分の身体のそこここを触っている。落ち着きなく、小刻みに身体を揺さぶる。見ている方
が苛立ってきそうだ。
誰も何も言わずに、老父の話にうなずいている。時折、老婆が「何をいってるの?」と笑う。

ふいに「具合はどうだ?」と老父が心配顔になり、老婆の腕をさすった。
「いつものことでしょ。もう何ともないから。心配しすぎなの、みんなは」
そうに言う彼女の顔は白い。血の気がない。ブラウスの袖から覗く腕は骨が透けるような細
さだ。
明らかに注射針を刺した痕とわかる内出血が、手の甲にまである。
手の甲の血管がいくつも赤紫に変色し、浮き出ている。

男の子が、「おばあちゃん」と言い、女性が「おかあさん・・・」と湿った声で言う。
再び老父が言葉を口にした。矢張りとりとめのない、訳のわからない話。

老婆はもう長く患っているのだろう。死期がそう遠くないことも知っているのだろう。
あの痩せ方は異常だ。
けれど、彼女の笑顔は屈託がない。とても穏やかな表情をしている。
悟っているのだろうか。これは諦めになるのだろうか?

老父の話は続いている。少し苛立った声で「おとうさん、さっきも同じこと言ったでしょ」と
女性が言う。
老父は認知症だ。あの意味不明な会話。落ち着きなく、身体を動かす様子。時々、窺わせる
怒りの表情。

10年後もしくは15年後か?自分の姿を見た気がした。
私は、人よりも速く肉体が老いていく。動けなくなる。筋力が低下する。早朝に目覚める。
できることが少なくなる。動きが緩慢になる。
それだけなのだろう。


to be continued....


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【はじめまして】 by 紅 蒼弥


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2010/07/10(土) 11:19:48 | URL | 紅 蒼弥 #xtsQx3EI [ Edit ]
【Re: はじめまして】
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2010/07/10(土) 12:52:39 | URL | 旅人 #- [ Edit ]


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