FC2ブログ
TOP > スポンサー広告 > Title - ずるいのねTOP > 短いはなし > Title - ずるいのね

スポンサーサイト 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



COMMENT LIST

ずるいのね 
貴方ったら、わたくしがどれ程か貴方の事を慕っているのかを知っていらっしゃって
本当に意地悪な方ね。
しばらく振りに逢えたのに、何事もなかったのようにわたくしの肩に手をおいて
「元気そうじゃないか」だなんて。
ときたまの電話でも、やっと声が聞かれたと思ったら「何かあったのですか?」っておっ
しゃるだけで。

けれども、わたくしはうっとりしてしまい、それ以上は何も言えなくて、ただそこここに
あるような他愛のない話を、挨拶のように言うだけなのよ。
わたくしは、もう貴方に袖にもしてもらえないのじゃないかと思って、毎日毎日、そりゃあ
苦しい思いをしていたのに。


それなのに、貴方のその声を聞いた途端に、胸の中にあった夥しい数の小さな泡が煙
っていたのが嘘のように、晴れ晴れとしてしまって、今までの厭な事なんて皆何処かへ
飛んでいってしまいますの。
貴方から文が届くのを朝に晩に楽しみにしつつ、郵便受けを覗いてみてもそこには何も
ないか、もしくはわたくしが期待しているものがないことを見止めると、生きた心地も
しなくなってしまうのだわ。

雨が降ると、どんな傘を差すのかしらとか、冬の薄暗い雲が垂れ込める雪になりそうな
時など、貴方の外套は暖かいのかしら、なんて考えてしまう。
今夜みたいに、夜風が風鈴を揺らして涼やかな心地にしてしまう時などは、貴方も縁側
に腰掛けて蛍の逢引を見守っているのかしら?

ふと気が付くと、貴方の事ばかりが頭の中に浮かんできてしまう。どうしようもない位
に逢いたくて仕方がないのだけれど、それを貴方に伝えることができなくて、尚の事辛
くなってしまうの。

貴方はわたくしのことなんて、まるでないかのようにきっと生きていらっしゃるのだわ。
時々、ふっと、そうね、あたかも突然の夕立の前の雷鳴のように、急にわたくしのこと
を思い出すくらいなのよ。
だから、わたくしはいつも怯えるしかないの。稲妻が黒い筈の空を一瞬青白く変えて、
轟音と共に激しい夕立を引き連れてくる時のように。あの瞬間が、わたくしは凄く怖く
て子供に戻ったように落ち着かなくて、家の中をうろうろするばかり。

貴方って本当にずるいわ。わたくしが貴方の事を慕っているのに気付いていながら、つ
れない態度ばかりして。
「もう、忘れちゃいましょう。」と仕方なく思い始めた頃になって、ひょっこりと姿を
現すなんて。
そうして、忘れよう忘れようという事さえも忘れてしまい、再び貴方のことを密かに想っ
て涙する日が続くのだわ。
貴方って、ずるい方ね。

無造作に結い上げた髪の後れ毛が気になってうなじに触れると、その指があなたのもの
であったらと思ってしまうわ。
嗚呼、困ったわ。こんな事、今の今まで考えたことなどないのに。
きっと貴方に知られたら、何てはしたない女と思われてしまう。
だけども、貴方に触れてみたくて接吻したくなって。
わたくし、自分がこんなにも破廉恥な女だったなんて、恥ずかしいわ。
貴方に逢いたいけれども、もう、それさえも恥ずかしくて躊躇われるのよ。

それでも、夜の星を見上げていると、貴方の顔がポっと浮かんできて、胸が苦しくなっ
てしまう。
貴方に逢いたくて、逢いたくてどうしようもないわ。
この浴衣を貴方に剥ぎ取っていただきたいわ。
まだ誰にも見せた事のない肌を、早く貴方に齧って欲しいと、望んでしまっているのよ。
何だか、身体が火照ってしまい、今までに感じたことのない肉体の欲望と疼きが襲って
くるわ。
どうして、こんな心持ちになってしまうのかしら?
自分のこの想いが、どうして何処から来るものなのかも、わかる術がなくて、わたくし
は、自分の気持ちなのに持て余してしまう。

矢張り、貴方はずるい方ね。わたくしの本当の気持ちに気付いてくれないなんて。
わたくしが、何も云えない事をお知りになっているのに、故意と意地悪みたいな事をし
たり、困らせたりしたりして。
その度にわたくしは、いてもたってもいられない程取り乱してしまって、けれど、それ
は貴方には関係のない事だもの、と、その甚だしく緊張したこころの糸が撓んでしまわ
ないように気丈に振舞っているのに。

でも、もしかしたら、湯上りの白地に紫の朝顔の浴衣を着ている姿を、本当は貴方に見
てほしいと願っているのに、そんな事をおくびにも出さずに、貴方に対して肝腎な事を
何も話せないでいる、わたくしの方が、ずるいのだわ。
何かに怯えて、とても不安定な気分で生きているだけのわたくしの事を、貴方にはどう
しても知られたくないと、今でも、ひたすらに隠しているのだもの。



人気ブログランキングへ



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(愛欲)へ
にほんブログ村





COMMENT LIST



<<初体験 *HOME 届かない>>
COMMENT



COMMENT FOAM

SECRET
 




TRACKBACK

TRACKBACK URL to this Entry

<<初体験HOME届かない>>


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。