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こころの闇 
女は、ほとほと疲れ果てていた。
男が自分の事を疎ましく思っているのは、とうの昔に気付いていた。
それでも、女は男を嫌いになれない。
徐々に何も言えなくなる。男は、勝手な事ばかり女にする。

自分の欲望の捌け口に女を利用する。
陵辱だと思う。女の事など何も考えずに、寝込みを襲う。拒めば罵倒する。
仕方なく、女は男の言う通りにする。
けれど、その拒絶とは裏腹に肉体は男を求め、快楽を貪る。
男に触れられただけで、快感に溺れる。甘く苦しいよがり声を上げる。
男への愛情は憎悪に変化し、それでも尚、男を棄て去る事が出来ない自分を嫌悪する。

長く気の遠くなるような時間をかけて、女は男の体内に緑色の粉末を入れる。
今までよりも男の元を訪れるようになる。男は、更に女を邪険に扱う。
飲み物に混ぜる。スープに味噌汁に、時には煮物に。
自分も時々一緒に食す。
朝顔の成長を観察するかのように、男をジッと見つめる。
そのうちに、男の体に変化が現れる。疲れやすい。食欲不振。吐き気、嘔吐。貧血・・・
ある日、男は吐血する。
女は、緑色の粉の入った小瓶をそっとバッグの底に忍ばせて、共に病院へ行く。

男の胃と食道にクレブスが見つかる。それは既に他の臓器へとメタ(転移)している。
入院した男を、女はひたすら介護する。時間を見つけては足しげく通う。
吐瀉物も排泄物も、素手で扱う。文句など言わない。
どんどん男は衰えてゆく。今までの勢いなどない。
痩せこけ、老父のようになった手の甲を、女は自分の手で包み込む。
抗癌剤の副作用で、吐き気に苦しみ、髪の毛が抜けても、女の態度は変わらない。
そっと優しく囁きかける「きっと治るから」と。

食欲が衰えて、固形物を受け付けなくなった男に、口移しで流動食を食べさせる。
男は、もう女に何もできない。言いなりだ。
やがて意識もなくなり、自発呼吸が出来ず蘇生機がつけられ、心マが施される。
そして男は、女と家族に看取られひっそりと息を引き取る。

女は、遺族から感謝こそされるが恨まれる事は決してない。
遺骨を一つだけください、と頼む。
女は、もう灰燼となり姿の見ることのできない男を想う。
男はもうこの世にはいない。自分を蔑む事などできる筈もない。
手の中には、黄色くボロボロと崩れる小さな男の骨がある。
女は、緑色の粉をトイレに流す。
小瓶はキレイに洗って、男が似合うと言ってくれたコロンの瓶の隣に置く。
時々、女は男の脆い骨を口に入れ、そのジャリジャリした舌触りに満足する。
もう誰にも渡さない。


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