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別離 上 
どうしてわからないのだろう?何故気付かないのだろう?
吐息した後、思わず苦笑した。
目の前で俯き、肩を落としている男に対して、女は冷たい視線を投げるだけで、
何も話す気になれない。

「俺が、何かしたのか?」
あたかもドラマの台詞のような陳腐な言葉が、男の口から漏れた。
「いいえ・・・」
そう、男は何もしていない。何もしてくれなかった。
何もしないという事をしただけだ。

女がどんなにか男を必要としている時、男は本当に何もしなかった。
冷たく突き放してくれた方がまだマシだった。
女が、苦しみの渦に飲み込まれそうになっていることにも気付かなかった。
やっと繋がった電話では「関係ない」と女のこころを切り刻んだ。
優しさとは、憂いのわかること。そして、相手の言動に気付くこと。

男は常に女に優しさを求めた。何も考えず、女は男に応えた。
それが普通だと思った。何の疑問も抱かず、見返りも求めてはいなかった。

ある時から男は女に何もしなくなった。
相談ということすらできなくなった。
声が聞きたい。只話を聞いてほしい。せめて、メールだけでも・・・
何日も何日も、女は待ち続けた。

そして、女は男が自分にしたことをした。
電話をかけない。メールをしない。何もしないことを選択した。
そんな時、男から再び連絡が入った。が、女は無視した。
男が自分の電話に出なかったように、メールの返信をしなかったように。

これを諦めと呼ぶのだろうか?女のこころは身動きしなくなった。
男のメールの言葉に何も感じなくなった。
好きなのか嫌いなのかもわからなかった。
ただ、興味を抱かなくなった。

気付いた時には、女は男の前に座りコーヒーを飲みながら、煙草を燻らせていた。
男の顔が静かに上がると、そこには微かに涙を滲ませて懇願するような姿があった。
思わず、女は視線を外した。
背中がひんやりとした。微かに吐き気を覚えた。
何度も何度も泣きながら電話をした女はそこにはいなかった。
その姿の一欠けらも残っていなかった。
男のために流す涙はもう終っていた。とっくに使い切っていた。
男はそれを知らない。苦しいのは自分だけだと、今のこの瞬間も思っているだろう。
女が孤独と苦痛に耐えられずに、死を求め泣き明かしたことを知らない。

煙草を透明な灰皿でもみ消すと、立ち上がろうとした。
もう一度やり直そう、話し合おうという男の声が遠くで響いている。
以前、強気に「別れるからな」と言った男の声は微塵もなかった。

俯き小さくなった男を、女は見やる。
こんな人知らない。と思った。誰だろう?誰と話しているのだろう?
私はこんな男は知らない。
女の前にいるのは、見ず知らずの心までも疲れきり、救いを求める子供だった。
そして、自分が世の中で一番の被害者だと信じきっている愚か者。

「さよなら」
と、言いかけ、男の横にはりつくようにソファに座る。
男は赤く眼を腫らしている。母親に叱られた子供のようだ。
無性に男の事が可愛いと感じる。愛しくてたまらない。
思わず、男の頭を自分の胸元に抱きしめる。髪に顔を埋めて、背中を優しく擦る。
「大丈夫よ。大丈夫だから」
こころの中で何度も何度も男に言い聞かせる。



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【Re: rudorufu】 by 旅人


Adusaさん、こんばんは

来てくれてとっても嬉しいです♪

こんな感じでやってます。



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【Re: rudorufu】
Adusaさん、こんばんは

来てくれてとっても嬉しいです♪

こんな感じでやってます。
2010/08/10(火) 19:39:13 | URL | 旅人 #- [ Edit ]


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