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離別 下 
力なく呆けたようになっていても、矢張り男には変わらない、と胸の中苦しくなった。
愛しくて仕方がない。離れる事は、自分を殺す事と同じだとわかっている。
それでも女は、別離を選んだ。
愛しても愛しても、愛し足りないと思ってしまうから。
こんな自分は、男から愛されることなどない。そんな資格はない。
もう、これ程までに深く、誰かを愛する事はないだろう。
決して忘れることはできない。美味しい愛。想い出にさえなりえない。
いつの時でも、女のこころの中に存在している。
女にとって男は、空気よりも重く、水よりも軽い存在。

一緒にいたら、お互いを罵り合い、否定し始めるだろう。
似ている部分が多すぎる。決してくっつかない磁石のように。
男が余りにも純粋すぎる。
そして、男にとって最も必要なのは、母のように全てを包み込んでくれる愛。
女は、そこまで男を許すことができないでいる。自分のエゴが顔を出してしまう。
ただ、思うのは男が恙無く平安なこころを持ち、健やかでいてくれる事だけ。

無償の愛に似ているかもしれない。けれど、それは今だけだ。
時間の経過と共にそれは変化してゆく。やがて愛憎になる。
男が女を愛しているよりも、女の方が多く男を愛している。
たくさん愛してしまった方が負けだ。
女は完全に負けだ。

男が落ち着いてきたとわかると、身体を離して、男の顔を両手で包み込む。
額にそっと口づける。
「ばいばい」
ぽつんと、小さくつぶやく。

女は何も語らない。傷付くことを止めるために。
男はそんな女の気持ちを全く理解できずに、途方に暮れる。
そして、それでもまだ微かに望みが残っているとしがみつく。
自分が「何もしなかった」という行為に気付く事なく。

窓から臨む小さな街の風景は、女がここを初めて訪れた日と同じように紫色した夕闇が迫っていた。
急に無為なものに思う。
初めて見た時の思いは粉々になる。
それでもまだ迷っている。ここから去ったら、もう二度と男には逢えない。
自分の脆さに途方に暮れる。情けなさが溢れ出す。

コーヒーはすっかり冷めてしまった。
男は、相変わらず無言で虚ろな視線を女に向けている。
何時間、この部屋にいるのだろう?そろそろ、立たなければ。
窓の外へ視線を投げる。黒くなり始めた空に白い雲がプカプカと浮いている。
その一つが静かに風で流れている。
朱い月が顔を覗かせた。フッと口元に笑みを浮かべる。
今夜も月は、朱く妖しく、冷たく女を守っている。
思わず、手を伸ばしそうになる。月へと向かいたくなる。立ち上がった。
女のこころの中には、決して赦されることのない罪が生まれている。
そして、その罪の罰を受けるためだけに、ここから歩き出す。



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