FC2ブログ
TOP > スポンサー広告 > Title - 彩佳 前TOP > 短いはなし > Title - 彩佳 前

スポンサーサイト 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



COMMENT LIST

彩佳 前 
まだ雨水を含んだ土がスカートについて、濡れてて気持ちが悪い。
草むらの中に、私は倒れてる。空がだんだんと夕焼け色に変わっていくのを、見てるだけ。
足首に、何かが絡み付いてる。それも濡れてる。このままじゃ帰れない。

赤とんぼがいっぱい飛んでる。もう秋なんだ。まだ、こんなに暑くてムシムシしてるのに。
ひぐらしが鳴いてる。それに混ざって、まだ生きてる、もうあと少しで命を終える蝉が、最後の力を振り絞って狂ったように鳴いてる。蝉の鳴く勢いは凄くて、何だかこの草むらの中に吸い込まれそう。

理犀、どうしてこんな事したの?私はずっとりっちゃんが一番だった。
なのに、なんで涼ちゃんの事を好きだって疑ったの?

怖かった。理犀が。男の人が。人間が。
声も出せない。身体が固まった感じ。怖い・・・

立ち上がったら、腿の間をヌルヌルしたものが流れた。その時に、何があったのかを改めて悟った。
しゃがみこんで、体育館の壁を背にして、声を出さずに泣いた。それしかできなかった。
スカートはビッショリで、背中もブラウスが張り付いてて、何だか途端に生きているのがイヤになった。
昨日の台風で、あの川は濁流。壁に寄りかかったまま、その流れを見てた。

こんな姿じゃ帰れない。転んだって言っても信じてもらえない。何て言い訳すればいい?
まさか、理犀がこんな事するなんて思ってもみなかった。
逃げるように走って行った後姿が忘れられない。どうして!?って叫びたかったのに声が出ない。
身体の震えが止まらないの。こころの中を引き裂かれたみたいで、凍てついた涙は、もう流れない。

蝉の鳴き声と川の流れの音だけが耳に入ってくる。木の枝がさやさやと揺れる。
万緑だと思ってたのに、少し黄色い葉っぱが出てきてる。
やっぱり夏は終ったんだ。

逢魔が時・・・空が薄暗くなってくる。まだ、7時にもなってない筈なのに。こんなにも陽が短くなった。

凄く疲れた。もう何も考えないで眠りたい。明日なんていらない。ずっと眠っていたい。眼が醒めないでほしい。

ごめんね。もう生きてられない。
桐佳のことだけが心配。あの子、すっごく臆病で、一人だと迷ってそこから抜け出せなくなる。

理犀、子供の頃は良かったね。指切りして、お嫁さんにしてくれるって言ってくれた。一緒にいるって。
「りっちゃんのお嫁さんになる」って言ったら、涼ちゃんが「なんで?」って怒ったよね。
だけど、嫌いになった訳じゃないけど、恐ろしくなった。
大人になんてなりたくない。ずっと子供のままでいたい。
涼介と涼介の妹の葵ちゃんと理犀と、私と妹の桐佳と。
いっつも遊んでた。それが当たり前だった。
何故、人間は大人になると男と女になって、あんな事するの?一緒にいるだけじゃダメなの?


人気ブログランキングへ



にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村





COMMENT LIST



<<彩佳 後 *HOME 言葉の集まり>>
COMMENT



COMMENT FOAM

SECRET
 




TRACKBACK

TRACKBACK URL to this Entry

<<彩佳 後HOME言葉の集まり>>


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。