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報復 
あの男だけは、絶対に許さない。
人を嫌いになることはあっても、殺したいくらいに憎いと思うことはなかった。
あいつに会うまでは。
あいつだけは許せない。今でもぶっ殺したくなる。
あいつのした事は殺人のようなものだ。私のこころを殺した。ズタズタに切り裂いた。
そして、私をも殺人者にした。
ジャック・ザ・リッパーのように楽しんでいた。

付き合いだした時から、ダメな男だとわかった。けど、別れたいとも感じないままに婚約までした。
頼れる部分もあったし、人間的にはそんなに悪い人だとも思ってなかった。根っからの悪人なんて
いないって思ってたから。
ただ、女好きで浮気を何度もした。その度に私は気付かない振りをしていた。黙認してた。
私と付き合っていることをひたすらに隠し続けた。婚約してからも。
理由なんて訊いても教えてくれないし、いつかは知れることだから、と私も問うことはなかった。

だけど、あの時だけは限界を超えた。
自分の誕生日に他の女、それも私の友人と浮気するような事を平然とやってのける男を許せるような
寛大さも寛容さも私にはない。

その日は、プレゼントを買ってくれる約束だった。私は、子供みたいにバカみたいに朝から浮かれて
た。
10時に来る予定だった。でも、その時刻に来なかった。電話が11時近くになってかかってきた。
友達と偶然会ったから遅くなる。でも3時までには行くから、と。
嫌な予感がした。女だと感じた。
何も今日でなくても、浮気なんて別の日でいいじゃん、と呟いていた。

結局、あいつは夕方5時頃にやって来た。何もなかったような素振りで。
でも、私は直感した。こいつ、さっきまで女とやってたんだと。
「買い物、行かないと・・・」
「もう、イイ」
一気に気持ちが萎えていった。どうでも良くなった。
「なんで?折角の誕生日なのに」
何が誕生日だ。ふざけるな。お前はその日に他の女と何回もやってたんだろう。
「彼女の誕生日に浮気する男なんて、サイテー。あ、私は彼女じゃないよね、いつでもできる只のス
トレス発散だったね」
憮然とした表情だったと思う。
あいつの顔が紅潮した。耳まで真っ赤になった。バカだ。バレバレだ。浮気するのなら、もっと上手
に、バレないようにしろと思った。世の中には知らない方が良いことだってある。

「・・・ゴメン」
認めた。もうイヤだ。堪忍袋の緒が切れた。
問いただした。誰と会ってたのか。自分の耳を疑った。まさか自分の高校の同級生だとは、予想だに
しなかった。、まだゲイの方が諦めがつくと思った。
「許さない。あんたの事一生許さない。死んでも許さない」
そう叫ぶと、私はキッチンへ行って、そこにあったペティナイフで手首を3回切り裂いた。
1度目は少し怖かった。でも、2度目も3度目も何も感じなかった。ただ、ナイフで切った箇所が熱
かった。

あいつが慌てて止めにきた。
傷口からは血がトクトクと出ているのがわかる。脈打つ度に血液が浮き出てくる。キッチンマットの
上に紅い斑点が増えていく。
思った以上に、力が入っていたらしい。
「止めろよ」
「人の事、馬鹿にするのもいい加減にしたら?私が気付いてないとでも思ってるの?
何度も浮気して、バレてないと思ってたの?私って何なの?ねぇ、結婚するんじゃないの?」
そこまで一息に喋った。
「だから、ごめんて言ってるじゃないか」
あいつの声が少し怒りを帯びていた。語気が強い。逆ギレかよ。
ムカついた。何言ってるんだ、こいつは。ホントにアホだ。
こんな男のために、私って何やってるんだろう?
今までの怒りが最高潮に達した。我慢して、溜まっていた毒が一気に溢れてきた。
「謝って済むなら警察なんていらないんだよ。そんな事もわからないのか、このボケ!」
叫んだ。
そして、手にしていたナイフを見て思った。
こんな小さなのじゃダメだ。もっと大きな包丁にしないと。
シンクの下から、包丁を取り出した。いつも使っていて、切れ味が一番良いものを。
これなら、死ねるだろう。

あいつには私がしようとしていることがわかっていなかった。
今まで口にしたこともないような言葉が次々出てきた。
まくし立てるように毒づいた。自制が効かない。汚らしい言葉が次から次へと口をつき、矢継ぎ早に
罵った。罵倒の嵐だった。
あいつは、呆然となり立ち尽くしている。背を丸め、小羊みたいに弱々しい。
その姿が余りにも滑稽で笑い出した。可笑しかった。こんなに惨めな男の姿は見たことがない。
狂ったように笑っていた。馬鹿笑いへと変わって行く。
あいつは恐怖に震えていた。そしてゆっくりと土下座して、謝罪の言葉を口にした。
私はその背中に何度もケリを入れた。あいつはされるままで反抗しない。当然の報いだ。
それでも怒りは全く収まらない。
「一生許さない。死んでも許さない」同じ言葉を繰り返した。
ボコボコにしてやりたかった。死ぬ寸前で止めればイイと。あいつの前にしゃがみこんで、手にした
包丁を、あいつの首筋に当てた。
顔がみるみる蒼白に変わっていく。恐怖は人を動けなくする。包丁を引くことは容易い。
だけど、それじゃあ、そんな簡単な事じゃ気がすまない。
そうだ、殺す必要なんてない。生き地獄の方が死ぬよりも辛い。

「バッカじゃないの」
苦々しく吐き捨てた。
腕からは、まだ血液が止まっていない。痛みはないが、腕全体が重くて熱い。
あいつの髪をつかんで、顔を上げた。泣いていた。でもそんな事は、私には関係ない。
「あんたを殺すのは簡単。だけど、そんな甘ったるい事はしない。今まで私にしてきた罰を受けるの
。あんたのした事で私がどれだけ苦しんできたかを、ボロボロになった姿を、ずっと忘れられないよ
うにしてあげる。」
あいつの眼は怯えている。焦点が定まっていない。
私は、笑みを作りあいつに包丁を握らせた。そして、その腕を私の二の腕に当てて一気に引いた。
熱かった。腕の感覚がおかしい。指先が痺れる。血液が、ポタポタと滴り落ちる。
血は紅い。真紅のぬるい温度の液体が腕を流れ落ちる。
今度は、腹部に腕を移動させた。
「止めてくれよ」
あいつの顔が歪む。それを見るのも可笑しかった。
気が違っていたのかも知れない。

私は、自分の身体を男に押し当てた。少し刃先が刺さった時、あいつは初めて抵抗した。
女の私が男の腕力に勝てるわけはない。いとも簡単に包丁は床に落とされた。
「もう二度と浮気はしないから」
男が私の両肩に手を当てた。その時、猛烈な吐き気と腹痛に襲われた。
床を転げまわった。目の前が薄暗くなる。瞼の裏が鉛色に変わる。わめいた。何が起こってのかわか
らない。
下腹部が痛い。激痛で意識が遠くなる。私の脚の間から生温かい液体が流れ出る。
あいつは救急車を呼んだ。
切迫流産だった。妊娠していたことも気付かなかった。
私は何の罪もない子供を殺した殺人者になった
まだ胎児とも呼べない時期だった。胎芽だと、医師は言った。
「早く処置して良かったじゃん。結婚前に妊娠してたなんて、みっともないよな」
それが、あいつの言葉だった。
やることだけやっといて、きちんと避妊してくれないで、今まで妊娠しない方が余程おかしい。
こいつって、ホントに自分勝手で人の痛みなんて感じないんだ。自分が良ければ何をしてもいいと思
ってる。

あいつとの婚約は、直ちに解消した。
私はあいつを許さない。今でもきっと何事もなかったように、のうのうとぬるま湯の世界で生きてい
る。絶対に許さない。
たとえ死んでも許さない。
一生かけて怨んでやる。孫子の代まで祟ってやる。

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